脱退
重要なお知らせという言葉は、緊急記者会見という言葉は、心臓を締め付けるのに十分な言葉。ましてや、そこで何が語られようとしているのか、図らずも耳に入っているならば猶更の事。聞きたくないの声が、夢であってという言葉が、ついて出るも当たり前。それは昔、好きになった時には誰もが、想像しえなかった事。永遠に来ることなどないと信じて疑わなかった事。そんな言葉は出るはずがないと無意識下で可能性を否定し続けていた事。
彼らの存在を知ったのはだいぶ前の事。ファンになったのはごく最近、大学生になっての事だった。自分の世界が広がって見つけた新たな世界だった。しかしそれよりも前から聞いていた彼の歌声の威力を知っている。
赤は要の色。戦隊モノではリーダーにされることが多く、情熱を表す色。
彼はまさしく要だった。関ジャニ∞のリードボーカルは彼だった。
小さな体から生み出されるその歌声はどこから出ているのかと思うほどに力強く、様々な感情を乗せていた。
独特なビブラートは彼の名を冠し「スバラート」と呼ばれた。
彼の声は誰が聞いても印象的な物だった。
印象的で、美しかった。
彼の抱く愛は大きかった。その愛をずっと享受し続けてきた。
「eighter」は彼がファンに付けてくれた名前だった。
彼からの贈り物の中で1,2を争う大きな贈り物だった。
関ジャニ∞は、8人でスタートした。
黒。赤。紫。橙。青。黄。緑。桃。
8を倒して無限大。無限大を付けた、関ジャニ∞。
歩み出して少し、桃が抜けた。7人になった。
黒。赤。紫。橙。青。黄。緑。
そこから沢山の時を歩んだ。
ファンは思っていた。もう誰かが抜けることなどないのだと。
桃がいなくなったあの時、もう二度と誰かを失いたくない、と。
それが当然だと思っていた。
これからの歴史は、その先の歴史は、関ジャニ∞という道は。
この先ずっと「7」なのだと。
それは青天の霹靂と言える。
「7」が、「7」から変わる事のないと思っていたものが、「6」になった。
黒。 紫。橙。青。黄。緑。
足りない。足りないのだ。
夢を追いかける。そう言った。音楽を勉強すると。
彼は愛していた。ファンを。関ジャニ∞を。そして、音楽を。
全ての基礎は音楽への愛とも言える。その愛を貫きに行くのだ。
中途半端な決断などしない人なのはわかっている。惜しみない愛を見せてくれたからこそ、わかっている。その人の愛に中途半端などありえない。だからこその決断だと、言い聞かせねばならない。
「勝手な決断」と彼は言った。熟慮しての決断なのはわかってる。勝手なんかじゃない。
でも消失感が酷いのだ。ぽっかりと開いた穴が、あまりにも大きいような、深いような気がして仕方ないんだ。大好きだったからこそ。
ドラムの前、時にベースとギターの間、時にダブルギターの間、舞台の真ん中。赤いコードをつけたマイクを持って叫ぶように歌う姿が見れないという現実は、あまりにも酷だ。
「今日という日が本当にこないでほしい」それは、何度願った事か。
メンバーも、ファンも。
7人で歩む道を応援してきたからこそ、6人になる背中を見る日が来るなんて思わなかった。思いたくもなかった。想像もしてなかった。だからこそ聞いてしまうのが怖かった。
最後まで出なかった言葉がある。
「関ジャニ∞を辞める」
彼にとってどれだけ大きな存在だったのか。大切で、宝物だったのか。それは私が想像するより遥かに大きいに決まっている。辞めると言わないでくれた事が嬉しい。そこにしか救いがないから。
結局はこの世は1つであり、この世界は1つだ。7人共に歩んできた道から1本、別の方向へと向かって行く。いつかその道の先がまた、6本と交わってほしいと願う事はいけない事なのだろうか。願ってはいけないだろうか。その目の先に、「再会」の言葉はあるのだろうか。
いつの日になってもいい。時間がかかってもいい。
その勉強をしたら。その勉強に満足がいったら。勉強を活かした活動が出来ると感じたら。戻ってきてはくれないだろうか。
どんな形なのかなど、わからない。わかるはずもない。
それでも。
また7人の背中が見たい。
その夢は、宝物であるその存在の中で、叶えることが出来たんじゃないかという思いがある。7人一緒に夢を見るという選択肢もあったはずだ。それでも1人の道を選んだのは、その覚悟が生半可な物じゃないから。
ある1つの世界の中で、様々な物を学んできた。それでも、他にある世界で学びたいと思うのは、学びたいと思っているものを愛しているから。飛び出さなくては学べない物が存在するのは確かな事だ。
自分1人が飛び出せばいい話だと思ったのかもしれない。その他にある世界に大切な仲間を無理矢理引き込んででも行く決断が出来なかったのかもしれない。今までの世界にいるのが仲間の幸せにつながると思ったのかもしれない。
どんな理由でもいい。1人になる事の決断は重く難しい物だから。
今までの関ジャニ∞を愛し、これからの関ジャニ∞と渋谷すばるを愛していく。
それしか方法はないのだろう。
いつか分岐点から伸びた道が集合する地点を期待してもいいだろうか。顔をつき合わせて笑う光景を見られると思っていいだろうか。
6つの「お帰り」と、無数の「お帰り」と、1つの「ただいま」と、7つの「ただいま」を聞きたいと願ってもいいですか。
ファン歴丸3年。4年目突入。まだ浅い自分でも、時期未定の帰還を願います。
でももしも戻る気がなくても。仲間と顔を合わせても6と1であり続けるとしても。
応援し続ける事に変わりはないと言い切れる。
未だ信じ切れずにいる私から、質も量も十分じゃないと言われてしまうかもしれない感謝と、エールと、愛を込めて。
文字にすると酷く小説的で感情が欠落して見えるかもしれないけれど。
メンバーカラー赤。
貴方の未来に、幸あれ!